古谷誠章:早稲田大学/実行委員長
建築とは実際の社会や都市に直結する極めてリアルな学問領域
早稲田大学教授
http://www.furuya.arch.waseda.ac.jp/
建築を学ぶ学生諸君にとって、卒業設計コンクールや若者対象のアイディアコンペなどは、その腕を試す恰好の機会である。だが、建築とは単なる机上の学問ではなく、実際の社会や都市に直結する極めてリアルな学問領域だ。学生らしい斬新さと若々しい熱意を持ちながらも、常に現実の場所に立ち、現実の諸問題を踏まえて、実効性のある提案を世に問う強い意志が必要である。名古屋の都市と市民を大いに喚起する豊かな発想を期待している。
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伊藤恭行:名古屋市立大学
市民の財産となる可能性について考えてみたい
名古屋市立大学准教授
今、公共が果たしてきた役割が批判にさらされている。市民感覚から見て、無駄な公共事業や採算性無視のハコモノ施設が批判の対象として厳しく批判されるのは当然のことだ。しかし、その一方で都市の未来を考える時、公共には民間にはできない役割があると思う。5年先ではなく、20年、30年先、あるいは100年先を見据えてヴィジョンを立てるのが公共の役割であるはずだし、公にはその見識が求められている。名古屋港ガーデン埠頭が本当の意味で市民のための財産となる可能性について考えてみたい。
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岡田憲久:名古屋造形大学
ランドスケープの視点から
名古屋造形大学大学院教授
http://homepage3.nifty.com/tabularasa/
名古屋港は海という強大な自然に巨大人工物が対峙する場である。物流の役割を担うことが主たる用途である他のふ頭と異なり、ガーデンふ頭は一般の人々が命の海にもっとも近づけるエリアである。非有機的なコンクリートの集合体のような港の景観の中心部であるこのガーデンふ頭が、命の海に育まれた本物の命あふれる場となり、そこを訪れる人が自己再生できるような環境の場の創造を望みたい。さらに計画地は生命の海を都心深くにまで送り込む堀川と中川運河のスタート地点でもあり、このプランが名古屋の環境軸として期待される二つの運河の環境再生の要の地になればと思う。
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笠嶋 泰:大同大学
他流試合の場となり社会的還元も期待できるプロジェクト
大同大学教授
http://www.daido-it.ac.jp/~kenchiku/kasa.htm
学外から依頼された課題を依頼者の前で発表する「Dラーニング」と呼んでいる設計授業を約10年前より行っています。依頼者からも評価されるとともに、参加した学生からも「熱い支持」と表現した方が適切である評価を得ています。
建築学科の設計授業に学生は膨大な時間を費やし、その成果品が単に成績の評価に使われるだけの実態に問題を感じ、始めたものです。
今回の、「街づくり提案」のプロジェクトも、社会に開かれた系の中で行われるものです。良い他流試合の場となるとともに、社会的還元も期待できるプロジェクトです。是非、多くの学生チームの参加を期待します。
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小嶋一浩:東京理科大学
空間を構想し市民と対話することが「気づき」を得るチャンス
東京理科大学教授
http://www.rs.noda.sut.ac.jp/~koji_lab/
名古屋港のガーデン埠頭という場所を素材に、公共の場所について現実的な枠組みをいったんカッコに入れて自由に考えてみる、という今回のイベントは、設計を目指す人たちにとっての思考のトレーニングの場所であると同時に、その思考の成果を直接市民に問いかけて対話を持つことができるという点でも貴重な機会となるでしょう。何故か世界にはいっぱいあって日本にはレアな港湾と市民の居場所のかかわりを考えることはもちろん、税金や企業の資金による開発とは別の視点で空間を構想し市民と対話することは、これから社会に出て設計に関わろうという若い人にとって、多くの「気づき」を得るチャンスです。
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谷田 真:名城大学
ウォーターフロントは都市にとって魅力溢れる場所
名城大学准教授
http://www.tanidaken.sakura.ne.jp/
ウォーターフロントは、多くの都市にとって魅力溢れる場所であり、まちづくりの鍵となるエリアです。しかしながら、現在の名古屋港周辺では、その魅力が十分に引き出されているとは言えず、海とまちとの関係も希薄な状況です。そこで、ウォーターフロントならではの魅力を引き出した、名古屋港ガーデンふ頭の未来のあるべき姿を、広く全国から求めます。この提案競技を通して持ち寄られた、既成概念に捕らわれないアイデアによって、多くの市民が名古屋港に関心をもち、名古屋港を考える契機となるはずです。
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千葉 学:東京大学
今改めて、その土地らしいこと、その場所にしかできないことを考えていく時
東京大学大学院准教授
http://www.chibamanabu.jp/
名古屋の湾岸地域の将来を、是非皆さんと一緒に考えたいと思っています。日本の地方都市の多くは、これまでミニ東京化するか、あるいはテーマパーク化する以外に何ら新しい方向性を見いだせずに来たように思います。そのような20世紀的都市像は、短期的な活性化の後の疲弊をもたらすばかりにも思えます。今改めて、その土地らしいこと、その場所にしかできないことを考えていく時ではないでしょうか。是非とも皆さんの建築的知性を総動員して、これからの日本の街の新しい姿を描いてみて下さい。
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内藤 廣:東京大学
市民が新たなる希望を見出しうるような提案を望みたい
東京大学大学院教授
http://keikan.t.u-tokyo.ac.jp
港湾は都市を支える物資輸送の要であり、都市や産業が大きく発展するためには欠かせない役割を果たしてきた。また、阪神大震災では、陸上輸送が寸断された時、海上輸送が大きな役割を果たしたことも忘れるべきではない。こうした港湾の役割を知る若者は少ない。時たま学生の卒業設計などで勇ましいプロジェクトに出くわすことはあるが、他の敷地と同様に港湾にも踏まえるべき大きな歴史があることに留意してほしい。重厚長大を中心とした産業形態が変わり陸上輸送の役割が大きくなるにつれ、港湾の役割も変わりつつある。都市の貴重な水辺をどのように再生させることが出来るのか、市民に開かれたものに出来るのか。そこに市民が新たなる希望を見出しうるような提案を望みたい。
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安田幸一:東京工業大学
港に海を取り戻す未来形ふ頭を創造してほしい
東京工業大学大学院教授
http://www.arch.titech.ac.jp/yasuda/
潮風と機械油の混ざった特有の匂いを嗅いでいると遠い記憶が甦ってくる。港は海外の文化の香りがいつも漂い、タイムスリップするような感覚に浸れる特別な空間である。陸と海の境界空間は、街にとって貴重な存在でもある。ところが街との関係が希薄なのだろうか、日本の多くの港街は残念ながらどこも同じような施設計画となってしまっている。現在の名古屋港ガーデンふ頭は日本最大クラスの水族館を有しそのポテンシャルはとても高いのだが、すぐそこにある海を身近に感じることが難しい公園である。とても変な表現であるが、港に海を取り戻したいのだ。ぜひ既成概念にとらわれない新しいイメージの未来形ふ頭を創造してほしい。
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渡辺真理:法政大学
インナーハーバーをどう生かすか?
法政大学教授
http://home.att.ne.jp/kiwi/adh/
海運の変化が港を変えた。広大なコンテナーヤードの必要に迫られ、都市に近接するインナーハーバー(内港)から港湾機能はフリンジの部分に転出した。
その結果として残されたインナーハーバーの再開発は米国ボルティモアがその代表的な成功例ということになっている。そこでは国立水族館や科学博物館とハーバープレイスという商業施設の組み合わせが成功の鍵とされた。ただ、それはすでに30年も前の1980年のことである。この30年間に社会は大きく変わった。インナーハーバーの再生にもそろそろ新しい手法が考えられてもいい頃ではないだろうか?
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